-ネジとおれたち

昨日、バッテリーを購入して、自分で取り付けることを試みた。親切な店員さんいわく、ネジで2箇所とめるだけだから簡単ですよ、と。男の子だからネジくらいは、と思ったおれたちが甘かった。言われた通りバッテリーを原付の後部座席のタンクにセット、あとはプラスとマイナスの極をネジで接続すれば完了。しかし、ネジは小さかった。
落下。小さなネジは原付の奥へと消えていった。ここから、おれたちのファインディング・ネジがはじまった。まず、見えない。おれたちの目にはネジが全く見えない。中が暗いせいもあるけど、とにかく何も見えません。とりあえず上下にゆさぶってみるが、無音。意を決したおれたちは、原付を逆さにすれば出て来るんじゃないかと幼稚な発想を実行。出て来いという願いを込めて、小さいくせに結構重い原付を逆さにしたおれたち。しかし反応ない。強いていえば、ガソリンの匂いが辺りにたちこめたくらい。これは無理だ。もう一度バイク屋さんに行って、ネジを譲ってもらおうと思った瞬間、奇跡は起こった。

ネジがある。なんと、盗まれたときにまだ片方の極に、ネジがついたままだったのだ。ファインディング・ネジ。汗だくで油まみれ、なんかメカニックになった気分のおれたちは感激した。今度こそ、失敗は許されない。慎重に作業を進めようとしたおれたち、しかし悲劇はすぐに起こった。再びぽろっとやってしまった…。しかし、今度は見えるところにいる。小指くらいの筒のようなところに入ってしまった。手は届かない。でも、頑張った。手を何度も入れようとした。しかし、取れない。おかげで手は傷だらけ。おれたちの手がもっと細ければ、と嘆いていたおれたちに一つのアイデアが。ピンセット。あっさり解決。ということで、二度目のファインディング・ネジ。
今度こそ失敗は許されない。マイナス極のネジを接続し、あとはプラス極。ネジはセットされた。あとはまわしてはまるのを待つだけ。高速回転。しかし、ネジは閉まろうとしない。逆さにしたり、格闘しているうちにネジを受けるナットがいなくなっていたのだ。失意の中で、とりあえず接続されているから、試しにエンジンをかけてみると…ドリームズ カム トゥルー。不安定なバッテリーのまま、とりあえず動く原付にのって急いでバイク屋へ。状況を説明したら同情してくれ、無料でナットを譲ってくれた。というわけで、原付復活。ようやく直った。
最後に一つ。二度のファインディング・ネジに成功したおれたちは、もう一つファインドしなければいけないものがある。失われたバッテリー。直った原付にのって、ファインディング・バッテリーの旅に出るおれたち。