-おれたちの大原グランド

 今日は暑かった。東北地方を台風が通過していく中、おれたちは大原にいた。今日はトップは10時練習開始だった。全く勝手がわからないおれたちは、9時に大原にいた。オフィシャルページに載っていた地図を頼りに、JR与野駅から歩くおれたち。すべての光景が新鮮で、20分という時間が短く感じられた。
 大原グランドという名前は中学3年生のとき、はじめて知った。おれたちの浦和が練習しているグランド。いつか行ってみたいと思っていたが、きっかけがなかったので行けないでいた。おれたちのバインや福田が練習しているところを、一度でいいから観てみたかった。
 大原が近づくにつれて高鳴るおれたちの胸の鼓動。クラブハウスが見えてきたときは、小躍りしていたおれたち。練習開始1時間前に開門するらしく、到着したときはまだ門が閉まったままだった。少し遠くからクラブハウスを眺めるおれたち。周囲をうろうろしていると、一台の車が。そこに乗っていたのは、おれたちの高校の先輩であるGKの山岸だった。すでに感動と興奮を抑えきれないおれたち。
 9時ちょうどに開門して、中に入るおれたち。そこには素晴らしい光景が広がっていた。できたばかりのクラブハウスは本当にきれいで、練習を見学するためのスタンドを清掃員の方々が掃除しているところだった。二階にはサポーターズ・カフェなるものがあり、昨年制覇したナヴィスコカップの優勝トロフィーなどが飾られていた。一番乗りだったおれたちは、誰もいないのをいいことに写真を取りまくっていた。
 9時45分くらいから徐々に選手たちが出てきた。近すぎる。こんなに近くでいいのかというくらい、近かった。はじめて浦和の選手たちがサッカーしている姿を同じ目線で観ることができた。
 明日試合を控えているせいか、全体的には軽めの練習メニューだったように思えた。アップは参考になるものがたくさんあった。セットプレーの練習は迫力があった。FKは山瀬とアレックスが蹴っていたけど、あまり入っていなかった。ポストシュートは迫力があったけど、山田キャプテンが非常に上手だった。
 当たり前のことだけど、みんな本当にうまい。おれたちが浦和に入団するためには相当な努力が必要だと痛感した。正確なトラップ、ロングキック。芸術的だった。当たり前のようにやっていたけど、やったことがある人ならわかると思うけど本当にすごい技術。
 夢のような時間はあっという間に過ぎ去っていった。終わって帰ろうとしたら駐車場の前に人の群が。よくわからないけど、とりあえず混ざってみたミーハーなおれたち。練習を終えて帰っていく選手たちの中で、ファンサービスとしてサインをしたポストカードを配ってくれる選手がいた。それを待っていたサポーターたち。おれたちは興奮した。はじめて浦和の選手たちを間近でみた。おれたちは都築、アレックス、永井そしてブッフバルト監督のカードをもらった。永井と監督は手渡してカードを配ってくれて、監督には「ダンケシェーン」、永井には「明日頑張ってください」とすこぶる人並みのことしか言えなかったおれたち。
 午後はサテライトの練習もあり、結局16時30分過ぎまで大原にいた。計7時間30分。こうしてみると長いけど、本当にあっという間の時間が過ぎていった。楽しかった。この日をおれたちは、忘れないだろう。そして、いつか大原でおれたちのポストカードを配るという新たな夢もできた。