-決意

ようやく英語の論文が書き終わった。はじめた当初はやり方がわからず、やる気もなかなか起きず、研究室にいてもただ時間だけが過ぎていく日々だった。そんな中で卒業式が終わり、提出まであと3日と迫ったとき、おれたちは想像できない力を発揮した。もちろん足りないところはあるものの、とりあえず形となって無事に提出することができた。
形式としてはまず自分で書いて、それを先生に校正してもらうという形。そのまま残っている箇所もあるし、大幅に変更されている箇所もある。先生には、頭が上がらない。特にこの3日でおそらく先生の部屋をノックした回数は20回近くになるのではないか。先生もおれたちだけの面倒を見ていればいいほど、暇ではない。なのに、文句を一つも言わず黙々と校正してくれた。おれたちは、そんな先生の姿を見ながら本当に心が苦しくなった。先生すめん、という言葉ではあまりにも軽すぎて、冗談でもそんなことが言えないくらい申し訳なくなっていた。
最後のチェックが終わり、先生の部屋にできた論文を持って言ったとき、それまでは立ちながら話をしていたが、椅子に座るように勧められた。
先生「ドクターはこれじゃだめだからね。今回だって3日でほとんど仕上げたでしょ?」
おれ「はい…」
先生「3日でこれだけできるんだから。修論だってほぼ半年でしょ?やってもできないなら僕も何も言わないけど、やったらできるんだから。」
おれ「…」
先生「毎日研究しろとは言いませんよ。でも、今までのようにやったらドクター取れないよ。やればできるんだから」
おれ「…はい。」
久しぶりに人前で泣きそうになった。終わったらどんな解放感が待っているんだろうと思っていたけど、そんなおれに釘をさしてくれた先生。ドクターに行くことが不安で仕方が無かったおれたち。だから、現実逃避ばかりして何も手につかなかった。ようやく客観的に自分を見ることができるようになった気がする。決意。先生の優しさに、心で涙したおれたち。本当にあと少しで4月になる。いよいよドクターとしての生活が幕を明ける。これからの3年間、この決意を胸に抱き続けよう。